
【帰敬式とは】阿弥陀さまの導きを受け、仏弟子として生きることを心に定める儀式
帰敬式(おかみそり)は、阿弥陀さまの教えに帰依し、仏弟子として新たな人生を生きていくことを表明する非常に大切な儀式です。その意義と、どのような想いで臨むべきかをお伝えします。
「帰敬式」とは、阿弥陀さまの教えを依り処とし、三宝(仏・法・僧)に帰依し、浄土真宗の門徒として生きていくことを誓う非常に大切な儀式です。「おかみそり」とも呼ばれ、受式された方には「法名」が授与されます。法名とは仏弟子としてお念仏の道を歩む者の名前であり、この世の縁が尽きた後もお浄土で仏さまとして呼ばれる大切なお名前です。仏教では、仏門に入り教えに従って生きることを誓う儀式を「得度(とくど)」などと呼びますが、浄土真宗の帰敬式もまた、阿弥陀さまの教えに導かれて生きていくという決意表明の場です。
- 本来、この帰敬式は、ご自身が「阿弥陀さまの教えを心の拠り所としたい」と願われた時に、生前にご本山(京都の龍谷山本願寺)やお手次のお寺などで自らの意志でお受けになるのが最も望ましい形です。受式できる場所はご本山をはじめ、本願寺派の直属寺院や一般寺院、その他宗門所属団体などで、法要や行事に合わせて執り行われる機会があります。ただし、ご本山以外で帰敬式が執行される場合は、ご本山から特別にその任を受けたお役僧が出向される場所に限られます。いずれにしても、自らの意志で生前にお受けになることが、その意義を最も深めることでしょう。
- しかし、様々な事情で生前に受式のご縁がなかった故人のために、ご遺族の深い願いにより、葬儀(多くはご出棺の前など)に際し、特例として僧侶がこの帰敬式を執り行うことが浄土真宗本願寺派では認められています。これは、故人が阿弥陀さまに導かれるひとりの尊い仏弟子として、お浄土へ往き生まれるお方であることを敬い、そのお姿を讃えさせていただきたいという、遺された方々の切なる思いと故人への深い敬愛の心の表れなのです。この儀式で故人は晴れて仏弟子となり法名をいただきます。
法名をいただくことは阿弥陀さまの教えに生きる仏弟子としての第一歩です。さらに篤く仏法を敬いお念仏の道を歩まれた方には、その信心の証として「院号」という尊称が授与されることもございます。この院号については後の「院号授与(本山永代経志)」の項目で詳しくご説明しますが、故人が仏弟子として、そしてみ教えを深く敬う門徒としてその確かな証をいただくことは、遺された私たちにとっても大きな心の慰めとなり、また故人のご遺徳を偲ぶ確かな形となります。この帰敬式もまた、故人を通して私たち自身が「いのちの本当のゆくえ(後生の一大事)」について深く考える尊いご縁となるのです。この精神文化を未来へと繋ぐ、尊いご協力として、み教えを広める場へお気持ちをお寄せいただくことも、深い意義を持つでしょう。